刑事事件

強制わいせつ罪で起訴!執行猶予を獲得して実刑回避するには?

強制わいせつ罪の刑罰は、刑法第176条に規定されていますが、強制わいせつ罪には、罰金刑がありません。
起訴されて、刑事裁判において有罪であると判断されれば懲役刑になります。

では、強制わいせつ罪で起訴されたら刑務所に行かなければいけないのでしょうか?実刑を回避するにはどうすればいいのでしょうか?

ここでは、強制わいせつ罪で起訴されてしまった場合、実刑を回避するための執行猶予を得る方法について説明します。

1.強制わいせつ罪の刑罰

強制わいせつ罪には、以下の通り、罰金刑がありません

刑法第176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

「懲役に処する」とありますが、懲役刑が言い渡される有罪判決には実は2種類あります。「実刑判決」と「執行猶予付き判決」です。

有罪でも、執行猶予付きの判決を得ることができれば、すぐには刑務所に行かずにすみます。

ただし、強制わいせつ罪は、窃盗や迷惑行為防止条例違反等の犯罪に対して用意されているような罰金刑がないことからも分かるとおり、軽い犯罪ではありません。
初犯でも実刑判決になる場合もある犯罪ですから、軽く考えるべきではありません。

2.執行猶予の基礎知識

では、「執行猶予付き判決」の「執行猶予」とは、どのようなものなのでしょうか。

(1) 執行猶予とは?

執行猶予とは、有罪判決が出た後でも刑の執行を一定期間、待ってもらえる制度のことです。

例えば、執行猶予付き有罪判決は、「被告人を懲役2年に処する」「この判決確定の日から5年間、刑の執行を猶予する」という形で言い渡されます。

執行猶予付き判決を受けた場合、執行猶予の期間中は、基本的には、何の制約もなく、自由に生活を送ることができます(ただし有罪判決を受けた事には変わりないので、一部資格取得の制限等はあります。また、執行猶予期間中「保護観察」という公的な監督を受けることが義務付けられることもあります)。

そして、執行猶予期間中、新たな罪を犯すことなく無事に過ごすことができれば、「被告人を懲役2年に処する」という刑の言い渡しの効力が消滅します。
そうすると、刑務所に行くことはなくなります。

しかし、この執行猶予期間中に新たな罪を犯してしまうと、「この判決確定の日から5年間、刑の執行を猶予する」という執行猶予の言渡し部分が取り消されてしまいます。
そうすると「被告人を懲役2年に処する」という言渡しの方だけが残ることになるので、その時点から2年の間、刑務所に行くことになります。

それだけではなく、新たな犯罪の裁判でも、ほぼ実刑判決を受けますので服役するのはふたつの判決で受けた懲役刑の合計期間となりか、なりの長期間、刑務所に行かなければならなくなります。

執行猶予の期間は、「1年以上5年以下」の間で決まります。

(2) 執行猶予になる条件

下記の条件にあてはまる場合には、情状により、執行猶予をつけることができることになっています。

①刑罰が、下記のいずれかであること

  • 3年以下の懲役
  • 3年以下の禁錮
    (禁錮は労務作業を強制されることのない点が懲役と異なり、懲役よりも一段軽い刑罰とされています。交通事故等で言い渡されることがあります。) 
  • 50万円以下の罰金
    (ただし、罰金に執行猶予が付されることは実務上ほとんどありません)

②下記のいずれかに該当すること

  • 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
  • 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者
    (つまり、懲役を終えてから5年経過した人、又は執行猶予期間を無事に終えてから5年経過した人になります)

なお、上記②の要件に当てはまらない人でも、再度の執行猶予をつけてもらえる場合があります。
しかし、要件は、上記の場合よりかなり厳しくなっています。

  • 前に禁錮以上の刑に処されて、執行猶予になったことがあること
  • 刑罰が下記のいずれかであること
    ・1年以下の懲役
    ・1年以下の禁錮
  • 情状に特に斟酌すべきものがあること
  • 保護観察付執行猶予中の犯罪ではないこと

3.執行猶予を得るための弁護活動

強制わいせつ罪で起訴された場合でも、社会に留まりたいと望むのであれば、あきらめることなく、執行猶予を得て、実刑を回避できるような弁護活動を行う必要があります。

執行猶予は、「情状により」つけることができるものです。そこで、情状をよくする必要があります。

情状には、犯罪の性質やその手段及び方法、発生した結果およびこれによる社会的影響、犯行の動機、被告人の年齢・性格・行状・境遇・前科前歴の有無、被告人の反省、再犯の可能性、犯罪後の被害弁償などさまざまなものがあります。

(1) 反省を示す

まずは、反省を示すことが情状の基本です。

真摯な反省を示すということは、口先だけで「反省しています」というだけでは足りません。なぜ、性犯罪をしてしまったのか、どうすれば性犯罪を犯すことを防ぐことができたのだろうか、どうすれば今後、再犯を犯さずにすむだろうか、今、被害者に対してどう思うのかという根本的なことをきちんと考えて自分の言葉で話すことが必要です。

そのために、弁護人とともに、自分の犯罪を振り返り、被害者の立場に立って、ものを考えるということが必要です。

刑事裁判では、「被告人質問」と呼ばれる手続きで、弁護人、検察官、裁判官から質問を受け、自分の気持ちを述べる場面があります。

それに先立って、気持ちを整理した反省文を作成し、裁判に証拠として提出することも考えられます。

(2) 示談交渉

強制わいせつ罪は、親告罪ではなくなりましたが、性犯罪において、被害者の処罰感情は大切です。
そこで、被害者に謝罪したことや、示談が成立しているかどうかは、情状における重要なポイントです。

被害者に少しでも慰謝の措置を講じることは、とても重要なことなのです。

示談交渉には時間がかかることもありますから、示談しないまま起訴されてしまったら、「いち早く、弁護士に示談交渉を開始してもらう必要があります。

(3) 贖罪寄付をする

被害者との示談成立が最も重要なのですが、性犯罪は、被害者の心の傷も深い犯罪ですから、被害者が示談に応じてくれない場合もあります。

そのような場合には、弁護士会や慈善団体などに贖罪寄付をすることで、反省の気持ちを行動で現すことも考えるべきでしょう。

(4) 治療を考える

性犯罪は、再犯率が高い犯罪であると言われますが、それは、依存症であったり、「性嗜好障害」などの病気になっていたりすることがあるからであると言われています。

このように病気が絡んでくる場合、理性や規範意識による抑制が効きませんので、本人の努力だけでは再犯防止の実現は困難です。

そこで、自分には治療が必要であるという状態に向き合い、これから治療を受けていくという姿勢を示すことも重要です。

場合によっては、弁護士や家族とともに、協力してくれる病院を探して、依存症などの症状についての診断書や意見書、今後の治療方針などを作成してもらって、裁判所に提出するということも考えられます。

そのためには相応の費用と、治療のための時間をかける必要があることは言うまでもありません。起訴されてから判決が下るまでの短い間で結果を出すためには人並外れた努力と強い意志が欠かせません。

(5) 家族に今後の監督を誓ってもらう

刑事裁判のときに、親や配偶者に情状証人として出廷してもらって、「今後、きちんと被告人を監督していく」ということを述べてもらいます。

身近に監督してくれる人がいるということによって、「刑務所の中ではなく、社会で生活しながら更生していくことができる」「再犯の可能性が少ない」ということを示すのです。

もちろん、言葉で約束するだけでなく、監督のための行動と実績を証拠で示すことが、正当に評価してもらうためにはより有効です。

4.執行猶予付き判決を目指すなら弁護士にご相談ください

強制わいせつ罪は重大な犯罪で、示談が成立したからといって必ず不起訴になるとは限りません。また、罰金刑もありませんので、起訴されたら必ず懲役刑となります。

しかし、懲役刑となったとしても、執行猶予付き判決を獲得することで、その後社会に復帰することができます。

長い間刑務所に服役をする必要がなくなりますので、弁護士のサポートを受けながら反省の意をしっかり示し、再犯防止に努めることで、執行猶予付き判決を得ることが大切です。

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