交通事故

交通事故で腕を切断したときの逸失利益

交通事故により肩から手首までの腕の部分、「上肢」を失ったときには、後遺障害等級認定を受けて損害賠償請求をすることになります。

交通事故で残った後遺症について、治療費などとは別に追加の損害賠償請求をするには、基本的に「後遺障害認定」を受けることが必要です。

また、損害賠償金額の目安は、症状の重さなどに応じて認定される「等級」により決まります。

上肢欠損の損害賠償請求では、問題が生じることがあります。その代表例が「逸失利益」です。

腕を失ったことで将来の収入に悪影響が出た際、その埋め合わせとなる損害賠償金が「逸失利益」です。
その金額はいくらになるのかについて、任意保険会社との示談交渉で大きな争いになるリスクがあります。

今回は、交通事故で腕を切断したときの逸失利益について解説します。

1.そもそも逸失利益とは?

逸失利益は「将来手に入るはずだったのに、後遺障害のせいで手に入らなくなったお金」です。
後遺障害等級認定を受けると請求できるようになります。

逸失利益の金額は「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じた中間利息控除(こうじょ)の係数」で算出します。

(1) 基礎収入

基礎収入とは一言で言えば年収です。事故前の年の年収を税金関連の書類などで証明します。

学生や専業主婦の方の場合、基本的に平均賃金(400万円弱)が基礎収入となります。

(2) 労働能力喪失率

上肢欠損の逸失利益では、おそらく労働能力喪失率が最も問題になりやすいでしょう。

「労働能力」とは、仕事や家事などの経済的価値がある活動をする能力で、後遺障害により労働能力がどれだけ失われたかを示す割合が「労働能力喪失率」です。

基礎収入に労働能力喪失率をかけ合わせれば、後遺障害のせいで1年あたりの収入がどれだけ減ったかを示す金額が出ます。

労働能力喪失率は、等級に応じて目安が定まっています。

等級 後遺障害の内容 自賠責の労働能力喪失率
1級 両上肢をひじ関節以上で失ったもの 100%
2級 両上肢を手関節以上で失ったもの 100%
4級 1上肢をひじ関節以上で失ったもの 92%
5級 1上肢を手関節以上で失ったもの 79%

(3) 労働能力喪失期間に応じた中間利息控除の係数

労働能力喪失期間」とは、後遺障害が収入に悪影響を与え続けるだろうと予測される期間です。

端的に言えば後遺症が残ったと認定された「症状固定時」から就労可能年限とされている67歳となる時までです。

また、逸失利益は本来なら将来ずっと定期的に生じる損害です。しかし、制度上は一括払いとなっています。

将来支払われるはずの金額をそのまま今受け取ると、利息の分だけ支払い過ぎとなってしまいます。

交通事故の損害賠償請求制度では、被害者様の保護はもちろんですが、当事者の公平やバランスも重視されています。そのため、利息を取り除く(控除する)というわけです。

なお、2020年4月1日から利息が変動制となり、控除額が少なくなることが予想されています。詳しくは弁護士にご確認ください。

2.上肢欠損の労働能力喪失率の注意点

多くの後遺障害の示談交渉では、逸失利益の金額は保険会社と意見が対立しがちです。

逸失利益は将来に関する損害賠償金。その計算項目もやはり将来を予測せざるを得ないあいまいなもののため、たとえ裁判にしても、事件によって金額が大きく上下しやすく、保険会社が漬け込みやすいことが原因です。

特に労働能力喪失率は、被害者様の具体的な事情次第で大きく下がりやすく、上肢の欠損でも満足のいく損害賠償金の支払いのためには乗り越えなければいけないハードルとして立ちはだかります。

(1) 労働能力に影響を与える事情

被害者様それぞれの労働能力がどのように生まれ、また、収入を生み出しているのかは、被害者様の社会の中での属性や仕事の内容によって異なります。

そして、どのようにして後遺障害が被害者様の労働能力を下げてしまうのかについても、労働能力に関する事情に加えて後遺障害の内容や程度との関わり合いにより、具体的な事情を絡めて複雑に評価されることになるのです。

具体的に問題となる事情としては、以下のようなものです。

職業・年齢・性別・後遺症のある体の部分・後遺症の程度・事故前後に現実に働いていた内容・事故前後の収入の変化・被害者様本人の特別な努力・職場の理解や援助

その他にも、被害者様ご自身を取り巻く状況次第で上記以外の事情が絡んでくることもあるでしょう。

(2) 上肢欠損で問題となる事情

腕を失ってしまったときには、ほとんどの場合現実の収入にも大きな悪影響が及んでしまっていることでしょう。

人にとって腕、そして手、指は、物を持つ、字を書く、キーボードを叩くといった人間らしい活動に不可欠だからです。

そのため、先ほどの表のとおり、制度上は上肢欠損の労働能力喪失率の目安はとても高くなっています。

それでも、等級表の労働能力喪失率よりも低い割合で逸失利益が計算されてしまう事情はあります。

義手について

上肢欠損で労働能力喪失率を押し下げてしまう原因の代表例が「義手」です。
義手により労働能力が回復したとされてしまうためです。

もちろん、義手を付けたからといって事故以前と全く変わらずに働き生活できるようになるのは非常に困難です。

それでも、技術発展により本物の腕や指のように動かせる義手が登場しています。
リハビリにより義手を使いこなせば、ある程度は失った腕の機能を取り戻せるのです。

このこと自体は間違いなく良いことですが、交通事故の損害賠償請求では、具体的な事情に基づいて他の被害者などとの公平を考えて賠償額を考えるものですから、義手により失った腕・指の機能を回復することができたとして、労働能力喪失率、ひいては逸失利益の請求額が減ってしまうことはなかなか避けられません。

なお、のちに触れますが、義手関連の費用は逸失利益とは別に請求できます。

実際に減収が生じているかどうか

仕事の内容によっては、腕を失ってしまったにもかかわらず、特段の減収が生じないことがあります。

特に利き腕は無事だったとき、仕事で両手を使うとは限らないケースでは、実際には減収が生じない、または減収があったとしても等級表に記載された労働能力喪失率に匹敵するほどの減収が生じないこともあるでしょう。

保険会社としては「現実の」減収を考えて逸失利益を考えるべきだと主張してくるでしょうし、裁判所もそのような考え方を否定しているわけではありません。

そのため、反論を工夫しなければ逸失利益が大きく減少してしまうおそれがあります。

3.労働能力喪失率で反論するために

保険会社との交渉で、できる限り労働能力喪失率を等級表に定められた目安の数字に近づけるよう、上肢欠損が被害者様の仕事に与えている悪影響を具体的に示す事実、それを証明する証拠を、弁護士と一緒に集めていくことが大切です。

(1) 義手について

義手の技術が発達したとしても、今はまだ限界があります。

リハビリで義手を扱う技術を磨いたとしても被害者様それぞれでどうしても熟練度に違いが生じてしまいます。

逸失利益を考えるうえでよく言われることですが、被害者様が元通りに働き生活できるように努力すればするほど賠償金が減ってしまうというのはおかしなことですから、とても努力をしているということは労働能力喪失率が下がることを防ぐためにもしっかりと主張すべき事情です。

リハビリを将来も継続するのであれば、仕事や私生活に費やせる時間がとられてしまうことも問題でしょう。

このように、義手の性能の限界・義手を利用したリハビリの限界・リハビリなどによる仕事や私生活への支障などに関する事実とその裏付けとなる証拠を集め、法律上の主張に組み立てて保険会社に反論する必要があります。

(2) 現実の減収について

今現在、減収がさほど生じていないとしても、それは家族や職場の皆様のご理解のもと、援助がされているからこそやっていけているということもあるでしょう。

しかし、シビアな判断は不可欠です。

  • 被害者様の努力や周囲の援助により減収が埋め合わされていること
  • 将来のさらなる減収のリスク
  • 将来に失職するリスク
  • 転職や再就職する先が限られてしまうリスク

現実の減収以上の労働能力喪失率をしっかりと主張するためには、これらの事実も同様に、事実・証拠・主張として整えなければ、保険会社への適切な反論とはなりません。

4.逸失利益の示談交渉では弁護士に相談を

上肢欠損では、認定を受けたら保険会社との交渉を始める前に弁護士に相談するようにしましょう。

逸失利益の金額は巨額です。わずかな労働能力喪失率の減少が数十万から数百万円、逸失利益を押し下げてしまうおそれがあります。

一方で、逸失利益に関する交渉はとても専門的で難しいものです。
義手や実際の減収状況に関する事情を保険会社への反論につなげるには、法律の専門家である弁護士に交渉を任せるべきでしょう。

弁護士に依頼すれば、逸失利益と並ぶ後遺障害の損害賠償金、「後遺障害慰謝料」についても大幅に増額できる可能性があります。

上肢欠損ではさらに、義手の将来の交換費用に関しても弁護士に依頼するメリットが大きいものです。

義手はとても高額でしかも交換や修理が不可欠です。損害賠償金として今装着している義手の作製費用だけでなく、将来の交換修理費用も請求できます。

将来のことについて賠償請求するという点で逸失利益と同じように争いになりやすいため、弁護士に交渉を任せる意義が大きいのです。

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