交通事故

上肢(腕)の機能障害|関節可動域について

交通事故で腕の関節が動きにくくなってしまうなど、腕の機能に障害が生じることは「上肢の機能障害」と呼ばれています。
「上肢」とは肩から先の腕のことです。

その損害賠償を請求するには、原則として後遺障害の等級に当たると認定される必要があります。

上肢の機能障害では、障害が生じた原因(骨折、靭帯損傷、神経断裂など)によって認定のため必要な準備や認定後の損害賠償金のポイントが異なります。

また、多くの場合は関節がどれだけ動かなくなってしまったのかを示す「関節の可動域制限」が等級認定に大きな影響を与えます。

健康な関節と比べて動く角度がどれほどなのか、わずかな測定結果のずれが認定される等級を大きく変えるおそれがあるため、上肢の機能障害で特に注意が必要となるのです。

ここでは、上肢(腕)の機能障害、関節可動域について解説します

1.機能障害の原因別で変化する検査や測定方法

腕が動かなくなった原因(関節の器質的変化か、神経マヒかなど)により、後遺障害等級認定手続のポイントが異なることがあります。

(1) 関節の器質的変化

「器質的」とは、物理的なもの、肉体のことです。
たとえば、骨が折れてつながってしまった・関節の周囲の組織(靱帯・腱・筋肉など)に異常が残ってしまった場合などを指します。

検査

画像検査は、関節の器質的変化を証拠に残すためにとても大切になります。誰の目から見ても関節の損傷を明らかにできる客観的な証拠となるからです。

事故直後にレントゲン検査やCT検査などがされますから、骨の損傷についての証拠は残りやすいでしょう。

しかし、骨の周辺にある靭帯など「軟部組織」は、MRI検査でなければ異常が見つからない可能性があります。
症状によっては、できる限り早くにMRI検査を実施するよう医師にお願いしてください。

可動域の測定方法

器質的変化による機能障害では、関節可動域の角度は医師が測定します。

被害者様自身の意思でどこまで動くか(自動運動)ではなく、他人が動かしてどこまで動くか(他動運動)をみるわけです。

関節の可動域制限は、わずかな違いで認定の有無や等級、ひいては損害賠償金額に影響を与えます。

ところが、しばしば可動域の測定は正しく行われないことがあります。医師がどれだけ力を入れるか次第で測定された角度にばらつきが生じてしまいやすいからです。

認定で用いられる可動域角度は、これ以上症状が回復しなくなった「症状固定」のときのものです。医師から症状固定を告げられた後、認定手続のために可動域角度の測定をする前に、弁護士に相談してください。

(2) 神経マヒ

骨や靭帯、筋肉が無事でも、神経が千切れたり押しつぶされたりしてしまうと、関節が動かなくなってしまいます。

関節は脳から指令を受けた筋肉で動いていますが、神経が損傷して脳からの信号が届かなくなれば、その神経が担当している筋肉は動かなくなるからです。

検査

神経自体の損傷は、手術しない限り直接証明することは非常に困難です。

画像検査はもちろん、外部からの刺激に対して身体がどのような反応を示すかをみる「神経学的検査」、神経を通る電気信号を調べる「電気生理学的検査」など、様々な角度から検査を行うことで事故が原因だと証明します。

具体的な検査の種類や内容は、腕のどの部分がマヒしたのかによって様々です。医師が適切な検査を選べるよう、症状をよく説明してください。

可動域の測定方法

被害者様の脳からの指示でどれだけ動くのかが問題になりますから、神経マヒで可動域角度を測定するときは自動運動、つまり被害者様ご自身が動かしてみてどこまで動くかを考慮します。

(3) 人工関節などの挿入置換

人口関節・人工骨頭を手術で関節に組み込んだときのポイントは損害賠償金の内容です。

技術の発展により、人工関節を入れたことによる可動域制限が大きくなってしまうことは少なくなりましたが、人工のものですから耐用年数があります。将来、定期的に手術をして新しいものにしなければいけません。

そのため、将来の手術費用などが損害賠償金として認められる可能性があります。

2.上肢の関節可動域

関節可動域の測定は、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会により決定された「関節可動域表示ならびに測定法」を参考にして行われることとなっています。

どれだけ関節可動域が制限されているかは、原則、ケガをしていない側の腕の関節の可動域角度と比べます。
両腕の関節に障害があるときは、あらかじめ定められている「参考可動域角度」と比べます。

測定対象となる関節の動きは「主要運動」と呼ばれています。
主要運動はそれぞれの関節で最も重要な役割を果たすもので、基本的に一つの関節に一つですが、例外的に複数の主要運動を持つ関節もあります。

主要運動が複数あるとき、後遺障害等級認定を受けるにはすべてが基準を満たしていなければいけないのか、それとも一つだけでいいのかは等級によって異なります。

一方、「参考運動」という関節の動きを考えることもあります。

主要運動の可動域制限角度が基準を原則5度(例外的に10度のことも)上回るときに、参考運動の可動域制限が基準を満たしていれば認定される等級があります。

【「他動運動」と「自動運動」】
関節の動かし方については「他動運動」と「自動運動」の区別もあります。
他動運動は他人の力で関節を動かすこと、自動運動は自分の力だけで動かすことです。原則として他動運動が用いられ、例外的に機能障害の原因が神経麻痺であるときに自動運動による測定値が用いられます。

それでは、上肢のそれぞれの関節可動域について、主要運動や参考運動、その参考可動域角度などを説明します。

(1) 肩関節

肩関節には、主要運動も参考運動も複数あります。

【主要運動】
・体の前方で下から上に腕を振り上げる「屈曲」が180度。
・体の横で下から上に腕を振り上げる「外転・内転」が合計180度。

この2つが主要運動です。

【参考運動】
・体の後ろへと腕を下から上にあげる「伸展」が50度。
・二の腕を脇にぴったりつけてひじから先を左右に動かす「外旋・内旋」が合計140度。

伸展は屈曲と同一面上の動きですが、可動域が合計されずに別の運動とされ、また、主要運動と参考運動に分かれてもいます。

1級や5級の「上肢の用を全廃した」、6級や8級の「関節の用を廃した」と言えるためには、主要運動である屈曲と外転・内転の両方が、関節可動域制限10%程度以下などの基準を満たす必要があります。参考運動は考慮されません。

一方、10級の「著しい機能障害」(関節可動域制限が2分の1以下)や12級の「機能障害」(関節可動域制限が4分の3以下)では、主要運動のどちらか片方だけ基準を満たしたときでも認定を受けられます。

参考運動も考慮可能です。

たとえば、主要運動である屈曲と外転・内転の両方またはどちらかの可動域制限が、2分の1をわずかに上回ってしまったとき、参考運動である伸展と外旋・内旋のいずれか片方だけでも、2分の1であれば10級となります。

12級もほぼ同様ですが、主要運動が「わずかに」基準を上回った場合については、10級は10度まで、12級は5度までという違いがあります。

(2) ひじ関節

ひじ関節は主要運動の「屈曲・伸展」だけで、他に主要運動はなく参考運動もありません。

その可動域角度は屈曲145度、伸展5度の合計150度です。

(3) 手関節

手関節は主要運動と参考運動が一セットずつあります。

手首の関節である手関節は、手のひら側に曲げる「屈曲」が90度、手の甲側に曲げる「伸展」が70度、合わせて160度が主要運動の参考可動域角度となります。

参考運動は、親指側に曲げる「橈屈」が25度、小指側に曲げる「尺屈」55度の合計80度です。

参考運動が測定で使われる条件は肩関節と同じです。

(4) 前腕

前腕とは、ドアノブなどをひねるような動きのことです。等級表に定められていませんが、機能障害が残れば10級または12級に準じるとして後遺障害に認定される可能性があります。

主要運動ひとつのみで、ひじを体の横につけて前に突き出した腕をネジの用に回す「回内・回外」、それぞれ90度で合計180度が参考可動域角度となっています。

3.まとめ

後遺障害等級認定を受けるためには、専門的な検査により交通事故が原因だと証明し、関節可動域制限などで症状の重さを明らかにする必要があります。

事故が原因だと証明できなければ後遺障害等級認定を受けられません。
検査結果に記載された関節可動域が実際の被害者様の症状を正確に反映していなければ、妥当な等級に認定されないおそれは高いでしょう。

弁護士に後遺障害等級認定手続の経験・知識に基づいたアドバイスを受けることで、医師に適切な検査や可動域制限の測定を実施してもらいやすくなります。

認定後の加害者側の任意保険会社との示談交渉でも、弁護士に依頼することで損害賠償金の基準増額が見込め、また、保険会社側の主張に対し効果的に反論することができます。

泉総合法律事務所は、これまで多数の交通事故被害者の方の損害賠償請求をお手伝いしてまいりました。
上肢の機能障害で損害賠償請求をご検討の方は、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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