交通事故の保険会社の対応が悪い場合に取るべき効果的な対処法
交通事故に遭われた場合、加害者が任意の自動車保険に加入していれば、加害者から事故の報告を受けた保険会社の担当者から、被害者の方あてに連絡があるのが一般的です。
なお、けがをしただけでなく(人身損害)、乗っていた自動車にも損害(物的損害)があった場合、それぞれ別の担当者から連絡がくることもあります。
被害者の方は、この担当者との間で、人身損害であれば医療機関に対する治療費等の支払いや賠償金額の交渉、物的損害であれば自動車の修理費の見積りや修理期間中の代車の貸し出しなどについてやりとりをすることになります。
しかし、担当者とのやりとりが精神的に負担となる被害者の方も少なくないようです。そのような場合、示談交渉を弁護士に任せることも選択肢の一つです。
ここでは、保険会社の対応が悪い時の対処法について説明します。
このコラムの目次
1.保険会社の対応と流れ
初めに、加害者が任意の自動車保険に加入していた場合の一般的な保険会社の対応を時系列に沿って説明します。
(1) 加害者が保険会社に連絡
加害者が任意の自動車保険に加入している場合、被害者に対する損害賠償金に相当する保険金を支払ってもらうには、事故発生の報告が必要不可欠です。
そのため、加害者は、通常、事故発生後、直ちに保険会社に事故発生の報告をし、その際、被害者の氏名、連絡先を伝えます。
たまにあることですが、加害者が保険会社に対し、事故発生の報告をしないことがあります。
そのような場合であっても、加害者が加入する保険会社が分かれば、被害者から保険会社に対して直接請求することができるので、事故の現場で加害者が加入する保険会社を聞くことは絶対に忘れないようにしましょう。
また、加害者が加入する保険会社を教えてもらえなかったとしても、弁護士は調査するノウハウを持っていますので、諦めずに相談しましょう。
(2) 保険会社の担当者から被害者へ連絡
加害者から事故発生の報告を受けた保険会社の担当者は、事故発生から間もなく、被害者あてに連絡をしてきます。
先ほど説明したとおり、人身損害だけでなく、物的損害がある場合には、それぞれ別の担当者から連絡がくることもあります。
①人身損害について
人身損害の担当者は、まず、被害者が負ったけがの内容、程度などを確認した上で、通院している医療機関の名前、住所を聞いてくるでしょう。
このとき、被害者が医療機関の名前、住所を回答すれば、担当者の方で、医療機関に連絡をし、治療費の支払いについて調整してくれますのでお任せしましょう。
被害者に対しては、必要な書類が郵送されてきます。
②物的損害について
他方で、物的損害の担当者は、被害者に対し、自動車の修理工場にあてがあるかを確認してきます。
というのも、保険会社は、自動車の修理金額に相当する額を保険金として支払うので、どのような修理がなされるかに関心をもっており、できる限り低額に抑えたいとの意向があるからです。
そのため、保険会社の社員自らが修理工場に赴き、自動車を確認した上で、必要な修理を確認しています。
被害者に懇意にしている修理工場がないということであれば、保険会社が提携している修理工場を紹介してもらえますが、先に説明したとおり、保険会社としてはできるだけ修理費を低額に抑えたいという意向があり、提携している修理工場だと、保険会社の意向に沿って修理をする可能性があるので、できる限り、被害者の方で修理工場を指定した方がよいでしょう。
具体的な修理費用については、修理工場の方と保険会社で調整してもらえます。
修理期間中、自動車がないと困るので、代車を使用したいと考える被害者もいると思います。
代車の使用料も損害として認められることはたくさんありますが、保険会社が争ってくることもあるので、被害者自ら借りる際には、予め担当者に対して代車を借りる旨申告をし、承諾を得ておくことが無難でしょう。
保険会社が提携している会社から代車を手配してもらえることもあります。保険会社が代車を借りることに承諾したとしても、あまりに長期間使用していると、代車の使用料が自己負担となってしまう場合もありますので、注意しましょう。
(3) 保険会社の担当者による通院状況などの確認
①人身損害について
被害者は、医師の指示に従って医療機関への通院を続けることになりますが、この間、保険会社の担当者から、通院の状況を尋ねられることが多いです。
なぜなら、先に説明したとおり、治療費は、保険会社から支払われるからです。
保険会社としては、できる限り治療費を抑えたいという意向があり、また、慰謝料は通院期間に応じて算出されるので、これを抑えるためにも、「今月一杯で治療費の支払を打ち切ります」といった連絡をしてきます。
担当者の中には、威圧的・高圧的な対応をとる人もおり、被害者の中には、担当者とのやりとりが大きなストレスとなって、痛みが残っているにもかかわらず、治療を終了してしまう方もいます。
また、担当者の説明を信頼し、もう治療してはならないと誤解してしまって治療を終了してしまう被害者もいるようです。
しかしながら、痛みが残っており、治療を続けることにより改善する余地があると医師が判断しているのであれば、治療を続けるべきです。
また、痛みが残っているものの、治療を続けてもこれ以上改善することが見込めない場合、残存した痛みについて、後遺障害認定を申請することができます。
ところが、これを案内することすらしない不親切な保険会社の担当者もいるようです。
後遺障害が認定されるか否かによって、賠償金の金額は大きく異なりますから、審査を受けることなく示談をすることは避けてください。
このように保険会社の担当者の対応が悪いのであれば、後に説明するとおり、第三者に申告したり、弁護士に委任したりすべきです。
②物的損害について
物的損害については、修理工場と保険会社との間で合意した修理金額で修理がなされます。
修理代金については、被害者の方が修理工場に支払った場合には、保険会社から支払いを受けることになりますが、保険会社から修理工場に対して直接支払われることも多いです。
(4) 示談交渉
人身損害について、治療が終了し、後遺障害が残ってしまった場合で、後遺障害の認定も終了した場合、保険会社側から、賠償金の提案がなされることが一般的です。
ここまで保険会社の担当者とのやりとりで疲弊しきってしまっている被害者は、数十万円単位の賠償金額を提示され、示談してしまうことも多いようです。
もっとも、絶対に覚えておいていただきたいのは、保険会社から最初に提示される示談金の額は、一般的な示談金の額より低額になっているということです。
そこで被害者自ら増額を提案してもよいですが、後に説明するとおり、弁護士に委任をした方がよいでしょう。
他方で、物的損害については、人的損害と異なり、修理費用がいくらか、代車の使用料がいくらかといったことが問題になるに過ぎず、これらについては示談の前におおよその話がついていることが多いので、被害者自ら示談することも可能です。
2.保険会社の担当者の対応が悪いときの対処法
それでは、保険会社の対応が悪いとき、被害者にはどのような対処法があるでしょうか。
(1) 加害者に連絡をする
保険会社の担当者の対応が悪いといっても、様々なケースが考えられますが、中でも担当者から連絡がない場合や連絡が遅い場合、有効なのは、加害者側に連絡をして自分が加入する保険会社に連絡をとってもらうことです。
保険会社からしてみれば、加害者こそがお客様です。
お客様が自身の加入する保険会社の対応に不満を抱くということは、保険契約を更新してもらえず、他の保険会社と契約してしまうことに繋がります。
したがって、お客様からのクレームは、もっとも避けなければなりません。お客様から被害者への対応についてクレームがきた場合、保険会社としては、全力で対応にあたることになります。
なお、被害者の方から、加害者に直接連絡をしていいの?と心配の声をお聞きすることがありますが、何の問題ありません。
(2) 保険会社のお客様相談窓口に相談する
後に説明するそんぽADRセンターと異なり、保険会社内部の組織であり、どれほどの実効性があるかは不透明ですが、通常であれば、お客様相談室から、申し出のあった担当者ないしその上司に報告をし、何らかの対応を求めることになると思われます。
(3) そんぽADRセンターに相談する
より強力な相談窓口は、そんぽADRセンターです。
そんぽADRセンターとは、一般社団法人日本損害保険協会のお客さま対応窓口で損害保険に関する一般的な相談のほか、保険業法に基づく指定紛争解決機関として、損害保険会社の業務に関連する苦情や紛争に対応しているものです。
被害者から、保険会社に対する苦情の申し出がなされた場合には、そんぽADRセンターが、当該保険会社に苦情の内容を通知して対応を求めることにより、当事者同士の交渉によるトラブル解決を促してくれます。
保険会社としては、そんぽADRセンターに苦情申し出をされると、そんぽADRセンターに対しても、社内でも煩雑な手続を強いられることになるようで、これを嫌がる担当者は非常に多いです。
そこで担当者の対応があまりにも悪いようであれば、「そんぽADRセンターに苦情を申し出ることを考えている」と告げ、対応の改善を求めることも有効でしょう。
(4) 弁護士に委任する
とはいえ、上記の対応は、いずれも抜本的な解決とはなりません。保険会社の担当者の対応がよくなったり、担当者が交代したりしたとしても、被害者自ら治療継続の交渉をすることや示談交渉をすることは、依然としてストレスになるからです。
ましてや、交通事故によってけがをしている場合、痛みがある中での対応はより強いストレスを感じるでしょう。
そういうときは、弁護士に委任するのがよいでしょう。弁護士に委任することで、保険会社の担当者との交渉のストレスから解放される上、賠償金も増額することが可能です。
もっとも被害者に対し、威圧的・高圧的な担当者がいる一方で、被害者に対しては柔軟に対応していたにもかかわらず、弁護士に委任したということが分かると、訴訟をも見据えて、徹底した対応をしてくる担当者もいます。
従って、どの段階で弁護士が出ていくのがよいかは事案によって異なります。
そこで、事故に遭った後、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
3.交通事故の示談交渉は弁護士にお任せください
交通事故の示談交渉は、ただでさえ精神的な負担が大きなものです。その上、保険会社の担当者の対応が悪ければ、ストレスも溜まり、より負担は大きくなります。
しかし、弁護士に依頼すれば、煩わしい示談交渉を全て任せることが出来ますし、被害者の方は治療に専念出来、普段と変わらない生活を送ることが出来ます。
弁護士費用特約が付いている保険に入っていれば、弁護士費用もかかりません。
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