自己破産するとスマートホン(スマホ)やパソコンはどうなる?
「自己破産」は、借金を支払えなくなった債務者が、一定の財産を裁判所により処分される代わりに、原則として全ての借金を免除してもらう債務整理手続です。
自己破産では、借金の全額免除という非常に大きなメリットの代わりに財産の一部が処分されますが、スマホやパソコンといった現代社会で不可欠なもので、尚且つある程度高額なものの処遇はどうなるのでしょうか?
ここでは、自己破産手続により、スマホやパソコンにどのような悪影響が及ぶのか、その回避策はどのようなものかを説明します。
このコラムの目次
1.自己破産により処分される財産
自己破産手続では、原則として債務者の財産は債権者に配当されるために、裁判所により処分されてしまいます。
もっとも、債務者の生活のため必要不可欠と認められている一定の財産は、「自由財産」と呼ばれ、処分されません。
自由財産には、極端な高級品を除いた家財道具一式や、99万円までの現金、年金受給権などの差し押さえ禁止財産が含まれます。
さらに、各裁判所の運用によっては、車などの特定の財産のうち財産価値が20万円以下のものも残すことができます。
2.自己破産したときのパソコンの扱い
パソコンについては、家財道具として価値によらずに自由財産となる場合もありますが、事業用の場合や極端に高額なものの場合には、自由財産として認められないおそれがあります。
個々のケースによって扱いが異なりますので、心配な方は一度専門家に聞いてみることをおすすめします。
また、パソコンが複数ある場合、1台ごとではなく全てのパソコンの時価の合計額が20万円以下になるかどうかで判断されてしまいますし、高価な付属品もパソコンと一体の財産とされてしまいます。
3.自己破産したときのスマホの扱い
スマホに関しては、本体自体は生活必需品と見なされ、自由財産としては認められるでしょう。
しかし、通信料やスマホ本体の代金の分割払い(ほとんどの場合、通信料と一体となって支払われています)が問題となります。
通信料の延滞がなく、本体の代金を完済済みの場合には心配は無用です。
自己破産後も従来通り通信料を支払い、スマホを使用し続けることが出来ます。
自己破産手続の際に問題が生じてしまうおそれがあるのは、通信料の滞納がある場合と、スマホ本体代金の分割払いが終わっていない場合です。
(1) 通信料の滞納がある場合
滞納した通信料は、自己破産手続による免責の対象となります。
債務者からすれば、支払わなくてよくなるわけですが、債権者である携帯会社からすれば、過去の通信料の請求ができなくなってしまうわけです。
そのため、携帯会社は、スマホの契約を解約してしまうでしょう。
裁判所を利用する自己破産手続では「債権者平等の原則」と言って、債権者たちを公平に取り扱わなければならないとされています。
よって、裁判所に債権者を申告するために提出する債権者一覧表にわざと債権者を記載しないと、免責不許可事由(借金を免除してもらえない事由)に該当します。
また、手続前に滞納した通信料だけを全額返済してしまうことも債権者平等の原則に反しますので「偏頗弁済」と呼ばれる免責不許可事由の一つとなってしまいます。
(2) スマホ本体代金の分割払いが終わっていない場合
スマホ本体代金の分割払いは、借金をしてスマホ本体を購入し、分割して返済しているものです。
ですから、たとえ延滞がなくても、一般的な借金と同じように扱われてしまいます。
携帯会社に解約されてしまうことや、携帯会社を手続から除外できないこと、分割払いの残金を一気に返済してしまうと偏頗弁済になるおそれがあることは、滞納している通信料の場合と同じです。
なお、通信契約の解約をされても、ほとんどの場合はスマホ本体を所有し続けることができます。
4.スマホの解約を回避する方法
(1) わずかな金額で返済する
裁判所の判断次第では、特定債権者への優先弁済があっても、他の債権者への損害はないとして偏頗弁済ではないとみなしてくれることもあります。
特に、金額が少額で、かつ、債務者の生活に必要な出費については、裁判所が見逃してくれる可能性が高くなります。
とはいえ、必ず裁判所が見逃してくれるとは限りません。少額でも、債権者平等の原則に反する支払いとなってしまうことに変わりはないからです。
返済をする際や裁判所を説得する際には、弁護士の助言に従ってください。
(2) 親族などに代わりに支払ってもらう
債務者以外の第三者が代わりに支払いをしてしまえば、偏頗弁済の問題は生じません。第三者が特定の債権者への返済を肩代わりした場合、債務者の財産は減りませんから、他の債権者への配当が減ることはないからです。
このように、他人に自分が支払うべきお金を支払ってもらうことを、「第三者弁済」と言います。実務上は最もよく使われる手段で、たいていの場合は親族に支払ってもらうことになります。
ただし、特に同居の家族の場合に問題となりやすいのですが、債務者のお金を親族名義で支払っているだけで、実質的には偏頗弁済ではないかと疑われるおそれがあります。
第三者弁済のためのお金の出所を明らかにする資料を保存することを忘れないようにしてください。
詐害行為とは、免責不許可事由のひとつで、財産を他人に安く売却するなどの行為をさします。詐害行為があると、債権者への配当のもととなる債務者の財産が減少してしまうため、免責不許可事由となっているのです。
経済的に苦しいからといって、パソコンやスマホを安易に売却すると、不当に安い価格で売却したとして詐害行為になりかねません。特に親族に売却した場合には、詐害行為であるとの疑いが強くなってしまいます。
借金の返済が苦しくなったからといって、安易なパソコンやスマホの売却は控えましょう。
5.スマホを解約されてしまった場合
(1) ブラックリストに登録される
ほとんどの携帯会社は、債務者の通信料滞納や分割代金不払いの情報を共有する「信用情報機関」に加盟しています。
そのため、通信料を長期に渡って滞納していたり、本体代金の残金の免責を受けたりした場合には、信用情報機関に自己情報が登録され(いわゆるブラックリスト状態になること)、5〜10年間はどの携帯会社とも契約できなくなってしまいます。
(2) 従来の携帯会社との契約はできない
通信料を滞納したまま、あるいは分割代金を支払いきれないまま自己破産手続をしてしまった場合、相手の携帯会社の社内データベースに、債務者が自己破産をした事実が登録されてしまうことがあります(社内ブラック)。
この登録は、ブラックリストと違い、いつまで経っても消えることはないと言われています。そのため、従来の携帯会社(キャリア)との再契約は諦めた方が良いかもしれません。
(3) 自己破産後すぐにスマホを使う方法
自己破産後すぐにスマホを使える手段としては、プリペイド携帯を利用することが挙げられます。
プリペイド携帯は、通信料を先払いしてスマホを利用するものですから、信用情報の審査もゆるく、自己破産後すぐでも問題なく利用できる可能性があります。MNP転入制度を利用すれば、電話番号を引き継ぐことも出来ます。
もっとも、業者によっては上記で説明した様々な信用情報機関をしっかり確認するところもあります。携帯会社の窓口で確認をしてからプリペイド携帯を購入しましょう。
なお、自己破産前から使用していたスマホがSIMフリーである場合、SIMカードを交換すれば、同じスマホを利用継続できます。
6.自己破産後とスマホ・パソコンの疑問も弁護士にご相談を
情報社会となった現代においては、単なる電話やメールだけでなく、SNSなどのコミュニケーションや新聞雑誌、動画などを閲覧するためにも、パソコンやスマホは不可欠となっています。
そのため、財産の処分や偏頗弁済において、ある程度は裁判所もパソコンやスマホについて寛容なところがあります。
しかし、パソコンやスマホは最先端の技術の塊であり、その価格は年を経るにつれ高額となり、無視できない価値を持つ財産となっています。
また、通信料や本体代金の分割払いに関する問題は、決して甘く見ることができるものではありません。
自己破産に当たっては、弁護士とよく相談して、適切な準備や対策をしましょう。
泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題を自己破産で解決してきた豊富な実績があります。ここでは解説しきれなかった実務的なサポートも致しますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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